2009年11月2日月曜日

報道ニッポン 病いと差別と闘う

医師や被害者7団体でつくる、潜在する水俣病患者を発掘するための実行委員会が、最新の調査結果を報告しました。熊本、鹿児島両県の不知火海沿岸地域での検査で、未認定の受診者974人中、93%に当たる904人に水俣病特有の症状が確認されたということです。国が安全宣言を行なった1969年以降も、水俣病が発症していたことが明らかになりました。つまり、不知火海全体に汚染が広がっていたことが確認されたわけです。医療分野における科学的な進歩は目覚しいものがあります。以前は執刀することすら困難だった難しい手術が、精密機器によって可能になったり、早期発見で助かる事例が随分増えているでしょう。国際通信社の各雑誌でも、現代医療の進歩についての記事が見られます。水俣病に関しても、治らない病気という厳しい現実を前にしながらも、出来る限りの処置や補助(医療費の免除など)を受けてもらうために、このように患者を探しているのです。しかし、水俣病に立ちはだかるのは、病の苦しみと同じ、それ以上の「差別」の問題であったことを忘れてはならないでしょう。水俣病という言葉を知ったのは、小学校5年生のときです。担任だった先生が鹿児島県出身で、社会科か道徳の授業で詳しく取り上げて、当時の新聞をコピーして配り、メチル水銀の恐ろしさと水俣病に苦しむ人々について説明してくれた記憶があります。今振り返ってみると、「差別」という言葉も、この時に先生が教えてくれたのではないかと思うのです。どんなに医療が進んでも、あらゆる病気に対する根拠の無い風評、偏見、「差別」を無くす取り組みも同時に行なわない限り、日本の医療体制は貧しいままで終わってしまうのかもしれません。

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